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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)142号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき理由の有無について)

二 当裁判所は、本願商標が引用商標と称呼において類似するものとした点において、本件審決に違法性はないと判断する。その理由は、つぎのとおりである。

(一) 本願商標については、その前記争いのない構成(編注、「BRITEX」)から「ブリテックス」の称呼が生じ、引用商標については、「BLISTEX」という欧文字を角ゴシック体で横書きした構成から「ブリステックス」の称呼が生ずることは明らかである。そうすると、両商標の称呼は、引用商標のそれが第三音として「ス」の音を有することを除いては、その音の構成、順序をまつたく同じくしている。そして、そのことと、発音上本願商標が五音、引用商標が六音とみられるものであつて、二音、三音というような特に短いものではないこと、引用商標の場合、その構成からみて、アクセントは第二音の「リ」にかかるとみるのが相当であり、第四音「テツ」は促音であつて通常強音として発音されるとみられること、引用商標における第三音「ス」がわが国における本願商標および引用商標の取引者、需要者の間において必ずしも正確に無声摩擦音として発音されるとはいえないとしても、少なくとも前記引用商標の構成からは、これにアクセントをかけ、あるいは、これを強音として発音されることはなく、他の音よりも若干不明確に発音されるとみられること、ならびに、本願商標および引用商標がともに造語であつて、特定の意義、観念を有しないとみられる(原告は、本願商標が原告日本ブリストル・ラボラトリーズ株式会社およびその関連会社ブリストル・マイアーズ・コンパニーの略称である「BRI(ブリ)」の部分と「TEX(テックス)」とを結合したものであつて、その取引者、需要者の間では、原告または右関連会社の業務にかかる商品であることを暗示させると主張するが、造語商標に自己の名称の一部を取つてこれと他の語とを結合させることが少なくないことを考慮に入れても、右の原告およびその関連会社の商号のうちの「BRI(ブリ)」のみを取つて「TEX(テックス)」と結合しただけで、原告主張のように暗示させるものとは到底認めることはできない。)こと等を合わせ考えれば、本願商標と引用商標とは、これらが一連一体に称呼されるとき、後者における第三音「ス」の有無にかかわらず、その全体的語調がきわめて近似しているというべきであつて、両商標は、称呼上彼此混同を生ずる虞がある類似の商標とみざるをえない。

(二) 原告は、わが国における取引者、需要者が、外国文字をもつて構成される語を称呼する場合、その一部を取つてこれを略称する傾向が強く、また、本願商標および引用商標における「TEX(テックス)」は、テキサス州の略称として知られ、織物、繊維類の商標について広く使用されており、本願商標の指定商品中抗生物質とくにテトラサイクリンの商標の接尾語として慣用的に使用されていて、商標の要部となりえないため、称呼される際、右「TEX(テックス)」の部分が省略されないとしても、これを除いた要部である「ブリ」および「ブリス」の部分に重点をおいて発音される可能性がきわめて強く、さらに、引用商標における第三音「ス」は、強音として明確に発音されるから、両商標の間には、称呼上相当の差異があると主張する。

しかしながら、外国文字によつて構成される語については原告主張のようにこれを略称する傾向があり、前記のとおり五音および六音として発音される本願商標および引用商標から何らかの略称が生ずるとしても、それ以外に通常「ブリテックス」および「ブリステックス」の称呼が生ずることは否定しえないところであり、また、かりに「TEX(テックス)」という部分が、テキサス州の略称として知られ、織物類、繊維類の商標について使用され、抗生物質とくにテトラサイクリンの商標の接尾語として使用され、慣用化されているとしても、これらのことから、売薬等の一般薬剤をも含む前記の商品を指定商品とする本願商品とする本願商標および引用商標における「TEX(テックス)」の部分が、その取引者需要者一般の関係において商品の識別力を持たず、その要部となりえないとすることはできないから、「TEX(テックス)」の部分が両商標の要部となりえないことを前提として、両商標が、「ブリ」および「ブリス」に重点をおいて発音されるとする原告の右主張は採用できず、さらに、引用商標の第三音「ス」が強音として発音されるという原告の主張の理由がないことは、前記(一)に説示したところから明らかである。

(三) 原告は、本願商標が商品抗生物質製剤に使用されているから、販路および取扱者が限定されているうえ、右商品抗生物質製剤が重要なもので慎重な取扱いをされるとの前提に立つて、前記程度の称呼上の差異があれば、彼此混同されることはない旨主張するが、本願商標の指定商品が前記のとおりであつて、商品抗生物質製剤に限定されていない以上、本願商標は、その取引者、需要者に右のような限定を受けず、また、その取扱いについても特段の慎重さを要求されないような売薬等の一般製剤にも使用されうるのであるから、原告の右主張は、すでにその前提において失当といわなければならない。(商標の類否は、当該商標が現実にどのように使用されているかにかかわりなく、指定商品との関係でどのように使用されるべきものであるかを基準にして判断すべきものであることはいうまでもない。)

(四) なお、原告は、本願商標と引用商標とが外観および観念において類似しないことに関して主張しているが、(請求原因(三)の(1)および(2)、本件審決は、外観または観念のうえで両商標が類似しているとしているのではなく、称呼において類似する以上外観または観念上の類否を論ずるまでもなく両者は類似の商標であると判断しているものであることは、その前記理由に照して明らかであるから、右主張は採用のかぎりでない。

(むすび)

三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというのほかない。よつて、これを棄却する。(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)

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